アーティストとグラフィックデザイナーの違いとは?③
アートとデザインについてのお話の続きです。
グラフィックデザイナーがアーティストだった幸福な時代もあったと思います、と言っていたところですね!
それはたとえば、尊敬する永井一正さんのポスターにも見られます。特徴的な動物のグラフィックは、永井さんご自身のポスター展はもちろんのこと、そうではない場合でも、独特の個性を放ち、「永井節」とも呼べるオリジナリティある表現が有名です。繊細緻密な線の扱いが記憶に残るデザインで、デザイナーであれば誰しも「永井さんっぽい動物」と言えばすぐポンっとイメージが湧くほどです。
横尾忠則 画像出典:(左)http://www.tadanoriyokoo.jp/ (右)http://www.ytmoca.jp/index.html
横尾忠則さんの作品はさらに顕著です。極彩色の浮世絵のようなグラフィックはあまりに有名で、横尾さんにポスターを依頼する企業はおそらく「横尾にさんに頼むときっとこんな感じの作品になるんじゃないか」とわかっていて頼んだでしょうし、消費者が「この企業すごい!横尾さんをポスターに使ってる!」という反応も期待していたでしょう。
クライアントの立場になって考えれば、デザインのクオリティに保証がほしいという気持ちがあることはもちろんですが、作品を見ただけで制作者がバレてしまうことを承知でデザインをまかせ「この人にデザインしてもらったから凄い」という「箔が付く」状態を期待しているのは、ほとんどアーティスト扱いですよね?
戦後のグラフィックデザインについて教科書や本で勉強したことのある人ならわかるように、そこに繰り返し登場する何名かの有名デザイナーの人が、あまりに語られすぎていて、晩年は伝説化するにつれてアーティスト化、タレント化していることに気づきます。
でもグラフィックデザイン草創期での挑戦や冒険のストーリーが憧れの対象になるのも尊敬されるのも当然ですよね。社会がグラフィックデザインの重要性をよくわかっていないときに戦ってデザイン業界というものを築いてきたのですから。
でも、だからと言って、この21世紀の新しい世代で、同じようにアーティスト的な評価や扱いがグラフィックデザイナーに与えられるかというと、そうは思いません。
たぶん、バブル期の終わりとともに完全にデザイナーの役割が変わっているからです。バブル期までの高度成長期なら、企業が、デザイナーの「名前」に高額のギャラを払ったかもしれません。しかし今、企業にそんなことをする余裕も、理由もありません。企業はデザイナーのパトロンではないのです。
現代のグラフィックデザイナーは、上手く自分の個性や独自性を目立たないように消し去ります。クライアント企業が発信したい価値や情報や印象を、自分が介在していると思わせないように(しかし内心は自分にしかできないと自負しながらも)消費者に伝えます。
もし今の時代に、デザインを見たらすぐあのグラフィックデザイナーだとバレるような個性的なデザイナーがいるとすれば、いろんなクライアントから個別の仕事を依頼されているのに、自分のやりたい表現のシリーズ作品を世に出すチャンスと勘違いしている自分勝手な人だと思ってしまいますねー。それはクライアントの目指すコミュニケーションの中では不必要で邪魔な情報だったり、逆効果でさえあるかもしれないからです。
もし仮に、グラフィックデザイナーだけど、その人の個性が目立つようなデザインばかり続けていて、それでもきちんと仕事が成立している人がいるとすれば、よーく注目してみてください。きっとその人はアーティストかタレントとして扱われているはずです。その人に頼めば、だいたいデザインはこうなるとわかっている人です。
でもそれはデザイナーを名乗る以上、諸刃の剣です。
独自の個性的な表現、しかも傾向の決まったものばかりしていると、ブレイクして成功する場合もあるかもしれませんが、ブームが終わると、一気に「古い」「流行遅れ」と言われる可能性があるからです。
アーティストももちろんそのリスクはありますが、アーティストという生き方の中にそのリスクは暗黙のうちに含まれています。でもデザイナー仕事でアーティストぶるのは危険ですし、現代ではむしろカッコ悪いと思うのはデザオだけでしょうか・・・。
あ、でも勘違いしないでくださいね!
デザインの仕事で自分のアーティスティックな表現を一切出すなということじゃあ、決してないですからね。ああ、3回で終わるつもりだったのに、予想していたより、このトピックが長くなっちゃいました!(^_^;)
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