【Q&A】私の会社は営業担当がクライアントとの打合せやプレゼンをします。これってどうなの?
ある卒業生のデザイナーT君の相談です。要約すると以下の様な内容でした。
私の会社では、デザイナーがクライアントとの打合せやプレゼンには出ません。すべて営業担当者がそれをします。
社長の方針というか考え方だと思うんですが、デザイナーはデザインに集中すべきで、打合せをしている時間はない。またデザイナーはコミュニケーション下手な人が多く、自分のデザインにこだわり過ぎるので、プレゼンをすることに適さない。
コミュニケーションの上手い営業担当者がクライアントの要望をしっかり聞いて、デザイナーやコピーライターに伝えるほうが効率的だし、制作したものへの変なこだわりがなく、客観的な判断が出来る。というわけなのです。
しかし、デザイナーである私にとっては不満が溜まるばかりです。営業担当者がどうも頼りなく、クライアントの話を正確に伝えてくれているのか、変更が多くて困っています。プレゼンも結果が良くない場合に、デザインが良くなかったのか、きちんとデザインの意図を説明してくれているのか、疑心暗鬼に陥ります。
また私自身、打合せやプレゼンをしないので、自分がオペレーターの役割になっていて、名刺に印刷してあるようなデザイナーと呼べる仕事をしているのか不安です。このままではもし将来転職したときに、打合せやプレゼンの出来ない人材になってしまうのではないかと心配です。
こういうシステムの会社って良くあるんでしょうか?それって本当にいいスタイルなんでしょうか?
な~るほど!T君の将来への不安はとても良くわかりますね^^これはT君個人のデザインスキルの問題ではなく、業界的な話というか、デザイン会社としてそのやり方はいいのかという話ですよね~。
さて、デザオに何が言ってあげられるでしょう・・・?
まず、営業担当と制作担当を切り離すということが、良いことかどうかですが、これは「誰にとって良いことか」によると思いますよ。
社長にとってはそのほうが効率良く仕事が回せるのかもしれないし、クライアントにとって窓口が常に同じひとりの営業担当のほうが、呼べばすぐ来るという感じでいいのかもしれません。この社長視点を仮に「視点A」と呼びましょう。
しかしT君のように、将来の打合せスキルを考えるひとりのデザイナーやコピーライターの視点ではその仕事のスタイルがラクな反面、自分の成長を制限するものではないかと感じさせてしまうというデメリットに映るわけです。この視点を「視点B」と呼びましょう。
これは整理してみると一目瞭然、「視点A」と「視点B」は表裏一体の話です。
「視点A」
・営業は営業、制作は制作に集中できる→効率が良い→残業も減るだろう→うっかりミスも減るだろう
・いろいろやらされるよりも、個人の営業スキル、制作スキルがそれぞれ向上するだろう
「視点B」
・営業は営業、制作は制作についてしか内容がわからない→責任範囲が狭い→営業の力量に左右される→やりがいがない
・業務範囲が狭いので単調になる→応用力のない人材になりそう→オペレーターみたい
こうなると、考え方の違いですね!で終わってしまいそうです(笑)でも実際そうなんです。これは社長の経営判断であり、社員であればその会社の方針やシステムに従うことを要求されます。
この「視点A」「視点B」の問題は別にデザイン会社のみの問題ではなく、大規模な会社か、中小企業かによってどの業界でも起こる問題と同じです。
大きな会社では細かく部署が分かれ、自分の守備範囲は狭くなります。このメリットはチームワークによって様々な問題に対処できること、ひとりひとりが自分の業務に集中できること、規模の大きさからくる所属欲求が満たされ、安定感があります。デメリットは、自分の力量や頑張りによる影響力は限定的で、多くの業務の流れを学ぶ機会は少なく、いつでも他の人に交換可能な、歯車の歯のひとつになっている気がして、やりがい、モチベーションは低下しがちです。
小さな会社では細かく部署が分かれていないので、個人の守備範囲(責任範囲)は広くなります。メリットは個人が様々な問題に対処するので、大変な分、仕事的・社会的に様々なことを学ぶ機会が多く、やりがいや独立心が養われます。デメリットは個人がなんでもしないといけないのでひとつの業務に集中することが難しくなり、チームのフォローも少なく、厳しい仕事環境に置かれがちです。
ね?どこでもある普通の問題でしょ?
ですから、このシステムの良し悪しは、まさにT君の考え方ひとつなのです。自分が打合せやプレゼンをしないことを、「助かるな~!営業が頼りなくて、ちょっとくらいのやり直しを頼まれるって言ったって、気を使う打合せに行くより、パソコンの前に座ってデザインに集中できるほうがいいや」と思う性格や考え方の人もきっといるのですから。
成長意欲の高いT君にとって
ここまでは大前提の話です。あくまで考え方や経営方針の違いで、別にデザイナーがプレゼンに行かないことが悪いシステムや悪い会社じゃありません。それによって効率がよくなりお給料が高くなるかもしれませんしね。
しかし、ここからはT君の性格・考え方を踏まえた極めてパーソナルな問題として見てみましょう。つまり、「視点B」の人にとってこのシステムって良いのか?という意味です。
「視点B」は、自分個人のキャリアパス形成を意識して、仕事を通じて、より勉強し、より多くの経験と知識を得ながら、高い成長を目指そうということです。
客観的に考えて、グラフィックデザイナーの仕事に普通打合せとプレゼンはつきものです。そこでは、相手の言葉の選び方、表情を見ながら、真意を測りつつ仕事を進めていく。時には提案したものが上手くいかず修正提案を繰り返すという苦しいシーンがあります。そのようなヒューマンコミュニケーションを、貪欲に自分の仕事の一部として、「いいもの」にしていく努力が、自分には必要だと判断するのが「視点B」です。
「視点B」の人にとっては、効率悪く残業があろうとも、デザインに集中できない慌ただしいときがあろうとも、ときには上手くいかず打合せがプレッシャーになろうとも、「逃げない」という姿勢が価値のあることで、営業がやってくれるので「ラク」であることに価値がないのです。
だとすれば、T君にとってこの会社のシステムは、良くないですね。(というか、合わないですね)となるわけです。
まとめ
ちょっとまわりくどくなりましたが、良い経営かどうかは置いておいて、デザイナーの「個人のやりがいや成長」を重視すれば、営業と制作を分けるのは良くないと思います。
なぜかというと、専門学校のグラフィックデザイナーコースに入学してくる様々な年齢の学生さん(ときにはデザオより年上のときもあります)の中には、けっこうな確率で、現役デザイナーがいます。
どうしてすでにデザインの仕事をしているのに、わざわざ専門学校に入学したのか?と取材すると、何割かは確実にT君のように、社内での制限された業務環境を理由にして入学してくるからです。
それは、「私は自分の職業をデザイナーですと人に言うのが恥ずかしい。営業担当者が大まかなレイアウトまで決めたメモを渡され、レイアウトしたりデータ化しているだけだ。DTPオペレーター化していると思う。このままではデザイナーとしてキャリアを重ねるのが不安だ。デザイナーとして仕事の仕方とか、何が大切なことかとかがわかっていないと感じる」という切実な声なのです。
学校のスタッフさんから、「新入学生にまた現役デザイナーが何人かいますよ」と聞くと、「も~、何で来るんだよ(^_^;)」と、講師としてのプレッシャーを感じるデザオも、そういう学生さんの具体的な悩みを聞くと「なるほど」と合点がいくのです。
そう考えると、やはり、打合せする→考える→デザインする→自分で提案する→いろいろある→喜んでもらう、という基本サイクルが、デザイナー個人の業務範囲内に入っていないと、不完全でフラストレーションが溜まるんだなということですよね。
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| 広告とデザイン業界 | 00:00 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑
僕の会社も営業、編集、デザイナーと分かれていて、同じような事を思いました。
ひどい発注は『クリックされるバナーをつくれ』だとか『反響がでるポスター』という発注がきたりします。職場では1番年下なんですが、その度、その営業や編集を呼んで『全部そのつもりで作っている』としっかり伝えます。また、クライアントとの唯一の窓口であるのを自覚してもらえるように話をするようにしています。仕事の責任感が薄い人との仕事でも、その事を言い訳にイイと言われるデザインができない。なんて事はないように努力するようにしています。どんな色合いで、書体で、レイアウトで、などなど何通りもあるので、少しでもクライアントの意向を伝えてくれと、言い続けています。Tさんも同じようなので気持ちがすごく理解できました( ̄▽ ̄)
| デザたまご | 2014/12/09 23:02 | URL |