新kindle voyageの広告になぜか面白みが感じられない!?どーして?
今日は、ここのところ、屋外広告や交通広告で見かけることが多い、amazonの新kindle voyageのキャンペーンです。シンプルなのはいいと思うのですが、どういうわけか面白くないというか、インパクトがないと思いませんか?
広告のデザインは、モノクロのイメージ写真部分と白バックの商品写真のエリアに分かれているシンプルなレイアウトです。これ自体は王道だし、シンプルなレイアウトであるべきと思っているデザオから見ても、自分でもやりそうなレイアウトなんですが、とにかく広告としての存在感が弱いんですよねー。
自戒の念を込めて、分析!
キャッチコピーは、2種類あります。商品写真の上には「さぁ、読書の海に漕ぎだそう。」です。奇をてらっているわけでもないし、間違っているわけでもない、普通めのコピーです。
もうひとつのキャッチコピーは、モノクロの写真の中にあります。男性が座ってKindle Voyageを読んでいるイメージ写真では、”言葉の海は広く深い”-「舟を編む」三浦しをん とあります。「舟を編む」は言わずと知れた、2012年の本屋大賞第一位になったベストセラーで、映画化もされた辞書編集者の物語です。
違うイメージ写真では、女性がカフェらしきところに座ってKindle Voyageを読んでいます。キャッチコピーは、”ぼくは禁断の海を航海し、未開の陸に上がることを愛する。-「白鯨」ハーマン・メルヴィル”とあります。「白鯨」も何度も映画化された1851年の長編小説で、白いマッコウクジラを追う狂気のエイハブ船長の名前とキャラクターは、多くの映画の中で日常会話として登場するくらい有名です。
この3つのキャッチコピーを並べてみましょう!
”言葉の海は広く深い”-「舟を編む」三浦しをん
”ぼくは禁断の海を渡海し、未開の陸に上がることを愛する。-「白鯨」ハーマン・メルヴィル”
さぁ、読書の海に漕ぎだそう。
こうみるとすぐわかるように、この広告では読書を「海」にからめて表現したいようですね。
残念ながら、商品写真の中の文献抄 [ある司書助手心得の提供による]で始まる文章は出典がよくわかりませんでした。知っている方がいたら教えてくださーい。でも、この文章中でも、鯨に関する本の記述について語っているので、白鯨か何かについての本かもしれません。(←補記:mkさんのコメントにより、「文献抄」はまさに白鯨の書き出しなんだそうです。mkさん、ありがとうございます!)
どうしてインパクトや面白みがないと感じるの?
多くのポスターを使っての一大キャンペーンですが、デザオの独断と偏見による勝手な分析によりますと、きっとこの広告は4つのポイントで改善が可能です。
<写真が暗い>
モノクロ写真を使ったのはおそらくKindle Voyage自体が本を読むための白黒表示のタブレットであることや、商品自体のカラーの選択肢が黒のみで、見た目の印象も白黒であることが理由でしょう。
しかし当然ながら、広告写真として考えるとモノクロ写真のインパクトはカラー写真に劣りがちです。またこの男性と女性がKindle Voyageを手にして読んでいる写真の背景が暗く、背景もよくわからないため、暗くとても地味な印象です。
さらに、読書の海は白黒ではないはず・・・。本を読んで思い描くイマジネーションの世界はフルカラーで表現すべきで、商品との連動を意識しすぎたのではないでしょうか。
<外国人モデルが共感できない>
Amazon、Apple、Google、Starbucksなど、グローバル企業の広告にありがちなことですが、モデルに多国籍な人種を使うこと=グローバルで多くの人の共感を得られる、と思いがちです。
しかし、日本の人種的画一性を舐めちゃあ困りますよ(笑)たとえどんな人種であれ、こんな外国人モデルのイメージ写真は、日本人の消費者にとって、イメージ写真でも何でもありません!海外旅行か海外留学のイメージですよ。ファッションなら外国人モデルを使う意義がある場合もありますが、日常の生活の使用シーンなら、日本人モデルを使うべきでしょう。
<「海」がビジュアル化されていない>
3つのコピーを見ても推測できる、「海」で広告表現を「くくる」アイデアはアリだとしても、コピーのみの「くくり」で終わっていて、ビジュアルとまったく分離してしまっています。程度の差はあれ、海をビジュアルに取り入れるべきだと思います。
授業で生徒にもよく言うのですが、本来コピーとビジュアルはワンセットになると一番伝達効果を発揮するのです。
もっとも弱い取り入れ方でも、この外国人モデルの男女が、大学やカフェのような場所ではなく、浜辺や漁港の雰囲気が漂う場所でKindle Voyageを読んでいるとかにするだけで、コピーで語っていることの伝わり方が全然違ったと思いますよ!
もっと極端に取り入れる場合は、あからさま海の写真やアート作品を使うことですが、その場合も白黒に縛られないほうがいいのは言うまでもありません。
<Kindle Voyage固有のセールスポイントが見えない>
これは専門学校でも学生に広告を作る課題をしてもらうときにまず考えてもらうことですが、その商品のセールスポイント(=一番伝えたいこと)を明確にして、そこからアイデアを展開します。
Kindle Voyageの場合で考えると、従来のKindleとどこがどう違うのか、そこをスタート地点(コンセプト)に据えなければ、何を言いたい広告(キャンペーン)なのか、よくわからないのです。
現状のままでは、「Kindleでもっと本を読もう」という読書キャンペーンでしかありません。←新商品の販促は二の次だから、それでいいのだ!まずは本を読もうという気分を盛り上げることだ!というなら別に構わないのですが(^_^;)
その差別化ポイントが、例えば、「圧倒的な解像度UPで細かい文字が本物の印刷物のようにクリアに読めるということ」だとすれば、それがビジュアルアイデアやコピーアイデアに直接反映されてこそ、今回のKindle Voyageの独自性が際立つというものです。
それは「海」の「くくり」を否定するものではありません。「海」を使っていても、「クリアな海」「微細な表情が見える海」「目を癒してくれる海」など、商品のセールスポイントとからめた表現にしていくことで、新商品の価値を感じさせられるのですから。
いつもクリックありがとうございます!今日もクリックしてほしいの。←あ、これは昨日のネタやったー(^_^;)
↓FC2ブログランキング、にほんブログ村、人気ランキングに参加しました。
それぞれ1クリックしてくださるとデザオとっても嬉しいですオー!よろしくお願いします!


にほんブログ村

デザイン・アート ブログランキングへ
| 雑記 | 15:00 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑
「文献抄」はまさにメルヴィルの『白鯨』の書き出しですよ。訳はいろいろですが。
| mk | 2015/03/28 03:13 | URL |