グラフィックデザインの雨音

グラフィックデザイナー志望者&初心者に語りかけるブログ

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グラフィックバー[雨音] ある春先の夜の女性客の悩み

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立春もとうに過ぎて、やたら暑くなったり寒くなったりする3月末のある雨の夜、大阪は梅田の路地にひっそりと佇む静かなバー[雨音]のカウンターに、今宵もひとりの悩める女性デザイナーがいた。

「今日は珍しくおひとりですね。」

客に気を使って滅多に自分から話しかけないマスターが、店内にひとり残った若い女にめずらしく声をかけた。

「ええ、たまにはひとりで飲もうかと・・・。」

「確か、デザインのお仕事をされてるんですよね。」

女性の顔がパッと明るくなった。

「よく覚えてますねー、マスター!でも、私も覚えてますよー。マスターも昔、デザインの仕事してたんでしょ?」

「え?ええ、まぁ・・・遠い昔の話ですよ。」

客に昔の職業を言われるとは思わず、マスターは先手を取ったつもりが、してやられたように小声になった。

「ふーん。でも私もう疲れちゃいましたよ~、もう。苦労して転職してやっとデザイン業界に入れたんですど・・・残業ばっかり!私ももう29なんですよ!このままこんな残業ばっかりしてたら彼氏を見つけるヒマもないっていう話しですよ!」

「はっはっは・・・なるほど。」

「デザイナーの女の人はみんなどうしてるのかなぁ?ちゃんといい人見つけて結婚してるのかなぁ?でもこんなに仕事が忙しくちゃあ、まともな時間にデートも出来ないし・・・、仮に結婚してもこんなんじゃあ新婚生活もできやしない!」

「でも、お金が貯まるんじゃないですか?」

若い女の顔があきらかに曇った。

「貯まるわけないじゃないですか!安月給なんだからぁ・・・もう・・・、しかも帰りが遅いからしょっちゅう自費でタクシーですよ!もう私ったら何をやってんだか・・・」

「そんなに遅いんですか?そりゃあ、大変だ。私らの時代は確かに残業残業でしたけどね、最近はデザイン業界でも昔ほど残業はひどくないって聞いてたんですけどねぇ・・・。違うんですかね。」

「9時、10時はざらですよ。」

マスターは、自分もかつていた業界の話とあって、いつもより口数が多くなっているようだった。

「今の仕事、嫌いなんですか?」

「ん~、どうかな?」

若い女はカウンターのグラスに手をおきながら、しばらく考えていた。

「私には専業主婦の自分は想像できないなー。なんでもいいから手に職があって、ひとりで生きていけるようにはしておきたいんですよ。だって、結婚するかどうかわからないし、仕事は必要なんです。」

女は自分にいい聞かせるように、慎重に言葉を選んでゆっくりそう言った。

「でも結婚はしたいと思ってるんですよね?」

「いや、別にしなくても・・・いや、いい人がいればしたいのかな・・・?わかんない。これまでそんなに考えてはいなかったんですけど、最近、昔からの友達が二人も続けていっちゃって、ちょっと焦ってきちゃった!(笑) ほんとにこのままデザインの仕事してていいのかなぁって・・・。」

「私の勝手な想像なんですけどね、デザイン業界にかぎらず、仕事でデートどころじゃないって悩んでいる女性は多いと思うんですけどねぇ・・・違いますか?」

「うーん、まぁ、そう言えばそうかな~。でも私の友達たちはそんなことないんですよ。みんなだいたい定時に終わってスパッと帰ってるんですよ。まぁ、でもひとりは公務員だから仕方ないけど。」

マスターは理解していた。酒で愚痴をこぼしていることを楽しんでいる客は、こうして、ぐるぐると同じところを回っている。どこからも解決されていかない状況について、嘆いているわけだ。本気で解決にチャレンジしているわけじゃない。この女性もそうだ。誰かに話しを聞いてもらいたいだけで、マスターに解決を求めているわけじゃない。しかし、マスターは少しからかいたくなったのかもしれない。柄にもなく余計なことを言った。

「じゃあ、私が神さまだと思ってください。私がそのお友達とあなたの状況を交換してあげましょう。姿や心はあなたのままです。職業だけ入れ替わるのです。あなたは明日から公務員になってもうデザイナーじゃない。明日からは定時に帰れます。」

女は、マスターはいったい何を言いはじめたのかときょとんとして聞いていた。

「ただし、私と友人の職業を入れ替えてください、と宣言してくださいね。そしたら、入れ替えてあげます。」

「はぁ?なにそれマスター(笑)」

突然、変なゲームにつきあわせようとするマスターに驚いた。もし職場で上司にそんなことを言われたら単にめんどくさいだけだが、お酒の席だからこそ、その変なゲームに真面目に取り組もうという遊びこころも生まれた。

よし・・・。

女はそれもおもしろいと考え、本気で友人との職業交換を想像しはじめた。しかし、なかなか言葉が出ない。

「いざ入れ替えてあげるって言われたら、意外と勇気がいるもんですねー。いろいろ考えちゃう(笑)うーん。。。」

マスターはだまってグラスを拭きつづける。

会話のキャッチボールにしては、かなり長い時間考えて、女は口を開いた。

「やっぱり替えてもらわなくていい!」

「へー、いいんですか?」

「うん、いい!しんどいだけだと思ってたけどデザインも捨てがたいし、本当に嫌になったら、ちゃんと時間管理できる会社に転職します。辞めたい時は自分で辞めて、次の道を探します。」

「・・・・・」

「それより神さま、そんな職業の入れ替えができるんなら、ステキな彼氏を使わしてほしいんですけど?」

「それはお願い事メニューにありません。」

「な~んだ!(笑)やっぱりか。あ~あ、帰ろう!」

「毎度あり」

こうして梅田の夜はふけていくのであった・・・。

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