どうやら、この電飾看板広告は、阪急が企画して公開中のオリジナルWEB小説を一種のモチーフとして利用した、阪急宝塚山手台という宅地の広告のようです。広告の出し手は阪急不動産となっています。
はじめ、広告のコピーかと思っていたいくつかの文字はどうやらそのWEB小説の一節のようです。遠目にもわかる大きな文字と別に、黒いベタ部分に白抜き文字で細かい文章もあります。そこを読むと一見意味不明の内容なのですが、小説の一部だと気づけば、何となくその意味不明度合いにも納得がいきます。
「ちょっと大人の物語をあなたへー阪急宝塚山手台」というキャッチコピーからわかるように、この広告の表現コンセプトは、小説の物語と実際の住宅地のイメージをオーバーラップさせていいイメージを持ってもらおうということだろうと推測します。そこまでは何の文句もありません。
しかし、何より驚いたのは、このデザイン(レイアウト)です。問題は4箇所の大きなフレーズの文字を、ほぼ意味を無さないほどにカットしてしまっているところです。
このデザイナーは、いかにも小説にありそうな「文学的言葉遣い」を広告の中にランダムに配置して、物語のいろんなシーンを断片的に感じてほしい・・・とでも思ったのでしょうか?
大失敗ですね(笑)
このように文字がカットされているというレイアウトをやりたくなる新人デザイナーの気持ちはわかります。何となくグラフィックデザインしているような気になりますからね!
正直言うと、デザオ自身、新人の頃、こういうレイアウトアイデアでラフを作ったことが何度かありますよ。そのたびに、上司や先輩に却下されましたけどね(^_^;)
たとえ、文字の一部がレイアウトスペースの端でカットされたようなデザインやタイポグラフィにしたとしても、読めないほどカットするなら入れる意味が無い。それなら文字を使った絵柄に徹した処理をしないと言われました。読ませる文字なのか、単なるグラフィックで読めなくてもいいのか、はっきりしろ!という意味の指導でした。
その教えに従うなら、この阪急不動産の広告の文字は、部分的に読めてしまうので、余計にややこしいのです。読める部分が少なすぎて、中途半端でしょう?読者の皆さんは、どう思います?オッケーですか?この文字のカットの仕方・・・。
中途半端なのは、部分的に読めてしまう4箇所の大きなフレーズだけではありません。しばらく眺めていると、写真のフチに動画フィルムの穴のようなものが付けてあったり、ポジフィルムの枠に見せるようなオレンジ色の文字が入っていたりして、画像を記録メディアのように見せようとしていることに気付きます。中途半端ですけど、映画のひとコマっぽくしたいんでしょうね!なかなか気づけませんが。
でも画像の中の登場人物は、モノクロっぽい集合写真以外は、すべて後ろ姿か、顔の部分がカットされているかして、特定の人物像にしないようにされています。もしかしたら、小説の登場人物の姿を規定してしまうことを避けるための処理かもしれませんが、ここまで後ろ姿ばっかりのカットを何枚も使うのはむしろ不自然です。中途半端な顔出し禁止もやり過ぎは変なのです。
まとめこの広告を見て思ったこと。それは15年ほど前の阪急百貨店の広告は、この手の、たくさんのコピーフレーズをひとつの画面にレイアウトするのが上手かったのになぁ・・・、ということです。
新聞広告だろうと車内吊りB3ポスターだろうと、シンプルではないけど、コピーフレーズや催しタイトルなどの、普通ゴチャゴチャしがちなたくさんの文字を、縦に横にとスペースを上手く使ってきれいにまとめるテクニックは賞賛に値するものでした。もちろん、この広告のように変な文字カットなどしていません。
そのレウアウトの妙は、当時の近鉄百貨店の広告が、あきらかに阪急百貨店っぽくしようと悪戦苦闘していたけど、あまり上手くいかなかったほどの上級テクでした。
この広告は阪急不動産なので、阪急百貨店と作っている人たちが無関係なのかもしれませんが、それでもついつい同じ阪急グループなのに・・・と思ってしまいます・・・。それはたまたま似たような表現アイデアだけど、こんな「やってはいけないレベル」までクオリティ低くなるんだなという悲しい発見でもあったんですよ・・・。
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