リスペクトリスペクト(respect)は、ご存知のとおり「敬意・尊敬する」です。相手をリスペクトしよう、などと使います。ですから、模倣の言い訳としてこの言葉を使うなら「ゴッホへのリスペクトが、この作品Aを生んだ」などと言うわけです。
オマージュオマージュ(hommage)は、イマージュでも、ミラージュでも、お饅頭でもなく、フランス語で「尊敬・賞賛」を表す言葉です。つまり、リスペクトとほぼ同じ意味として使われます。「ゴッホへのオマージュが、この作品Aを生んだ」となります。ちょっと難解なので文化的でかっこよく聞こえるという効果があります(笑)
日本語の中に織り交ぜて使うときに、リスペクトとわずかに違うのは、リスペクトは本当に「敬意」だけを表しているので、模倣とは切り離して使う言葉ですが、オマージュは「敬意」だけでなく、「ゴッホへのオマージュ」とか「オマージュ作品」のように、オマージュ自体に「影響を受けて制作したもの」という意味があることです。
ただどちらの場合も、作品Aがゴッホの作品とそっくりであろうが、まったく似てなかろうが、制作者がゴッホを尊敬しているから生まれた作品というきっかけを説明している言葉です。
インスパイアインスパイア(inspire)は、お初天神近くにあるショットバーでもありますが、ご存知のとおり、「(ある感情とか思想を)起こさせる、鼓舞する」という意味の言葉です。「ゴッホのひまわりにインスパイアされて、作品Aを生んだ」と使います。
受け身ですね。リスペクトやオマージュと言った主体的で長期的なじんわりしたイメージではなく、受動的で瞬間的な刺激やショックを受けて、というニュアンスに近いでしょう。ひらたく言えば、ある作品を見て、ガーンと来て(感銘を受けて)という感じです。
影響・関連を表す言葉と、実際の模倣の程度は別問題。まとめると、いずれの言葉も、ある作品をつくるきっかけが、過去のほかの作品にありますという「影響・関連」を示した言葉です。そこには肝心の模倣の程度がわかる基準はありません。
だから、たとえリスペクトです、オマージュです、インスパイアされたんです、と公言したとしても、作品の模倣が過ぎるとやはりパクってるだけじゃないかという陰口や批判は避けられません。模倣の問題は、あくまで作品の表現の範囲での程度問題だし、制作者の気持ちは関係ないのです。
ただ、昨日の記事(
こちら)で提示した、パクリ(盗作)の条件①「オリジナルの作品の存在を隠したり、知られないだろうと考えて模倣する」に抵触しないように、あえて、オリジナル作品の存在を声高に言うことで、最初からガードを張っておくという効果は期待できます。
オリジナル作品の存在を広言するか、隠すかによって、パクリ(盗作)か否かが判断されがちです。人からパクリであるという批判や疑いをかけられて初めて「実はオマージュなんです」と言っても遅いのです。言い訳にしか聞こえません。
しかし一方で、はじめから「◯◯さんの作品の影響を受けて制作しました」と公言していたからと言っても、パクっていると言われるリスクはついてまわります。
「◯◯さんの影響」をばらしていても、人から見ると、じゃあなんで同じような作品を作るんだ、とその意義を問われるのです。中学生が好きな漫画のキャラクターを描いたり、高校生が好きなバンドの曲をコピーしようとするように、作品を真似るだけなら絵画でいう模写の範囲で、創作ではありません。単なる習作ですよねー。
ここでも登場!アーティストとデザイナーの違い。また、もうひとつ注意しないといけないことは、リスペクト、オマージュ、インスパイアは、芸術家(アーティスト)同士だからこそ、責任の所在が明白なのだと認識することです。芸術家や、何か自分の名前で作品を呼ばれるものを作る責任者ならこれらの言葉を語れます。パクった、パクってない、リスペクトして作った、インスパイアされている、されていない、すべて芸術家個人の責任で言い訳もできます。(だからこそ裁判になることもあるんですけどねー)
しかし、仕事を依頼されてデザインするグラフィックデザイナーが、クライアントやそのときの仕事のコンセプトを棚に上げておいて、勝手に「葛西薫さんのオマージュのポスターです」とか、「戸田ツトムさんにインスパイアされたラッピングデザインです」なんて、恥ずかしくて言えるはずもありませんよね?(実際に影響を受けたとしてもですよ)
それはデザイナーの問題ではなく、A社がB社のデザインをパクってる!という大問題につながるからです。デザイナーのプライドとしても、ビジネス現場でのリスク回避のためにも、パクリと誤解されそうなくらいよく似た表現は絶対にやめましょう(笑)
デザインの仕事においては、ほかのデザイナーへの尊敬の気持ちはあっても、それを模倣してはいけません。パロデイでさえ、クライアントの要望がない限り避けるべきことなのです。
でもやっぱり、完全なオリジナルなんてない。しかし、公言するまでもないながら、明らかな影響が広がっていくことは否定できないのも事実です。「参考にした」、「アレンジした」、「ミックスした」のように表現されるデザインも同じで、影響・関連を表していますが、別に悪いことではありません。それが、ファッションと同じように、デザインの流行を生んでいくのですから。
これに関しては、以前の記事「
自分の完全オリジナルなデザインなんてあり得ない!?」で書いたので触れませんが、ほかの作品を参考にしたり、取り入れたりしても、いいのです。
大事なことは、結果的に完成したデザインが、人から見てパクリと取られそうなことは避けるべきということです。パクリと思われるためには、元の作品がよほど個性的・特徴的なはずで、デザイナーがその目立つ個性・特徴を移築しているという時点で、やはりデザイナーとしての誠実さを疑われても仕方ないのです。
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